コミケット スペシャルレポート
3月28日と29日の2日間、幕張メッセで催された「コミケットスペシャル6」に参加した。
アメリカンイラク大学スレイマニア校とヨルダン科学技術大学の学生が、作品を提供してくれた。どちらの学生も日本に憧れを持ち、夜な夜なユーチューブなどを通じて日本のアニメを見ているという。そんなアニメ好きの彼らの作品を、同人誌というかたちで配布するという目論見である。
同時に昨年行った写真展『イラク24時』の写真の展示と、パンフレットも頒布。ヲタクサミットに、新たな風を吹かせることができたのではないだろうか。
今回も、多くの方々の協力があった。
コミケスタッフで展示責任者になってくれたのは、歯科医の仲村信慶さん。中村さんは、お忙しい中、何度もお見えになり、頒布までもお手伝いいただいた。
頒布ボランティアとして活躍してくれたのは、国士舘大の三田雅晴君、高本美奈さん、慶応の北村涼太君、高校生の渡辺啓太君、佐野美桜乃さんの、フレッシュ5人組。カメラ目線の渡辺君。うつむくのは北村君。2日にわたり、彼ら彼女らの若い力が、老体中山副代表の大きな支えとなった。
2日目(29日)のこと。ヨルダン科学技術大学のアニメクラブ会員であり、現在国費留学生として筑波大に在籍しているイルハムさんという女性が来訪してくれた。
彼女自身は、今回のオタクサミットに作品を出してはいない。しかし、ヨルダンの仲間が描いた漫画が同人誌として展示されているのを知り、喜び、感動してくれた。また、会場の雰囲気を伝えるため、ヨルダンの仲間とスカイプをして盛り上がっていた。
コスプレイヤー、東方、二次創作、オリジナル。ヲタクたちの集うイベントに、一か所だけ風変わりなブースがあったことになる。どこの国だろうか、外国の少女が、こちらにカメラを向けている。日本の少年少女たちと変わらない、綺麗な瞳だった。副代表の中山が、「普通の日常をね、撮っているんだよ」と、淡々とした口調で話し始めた。「写真の少女とさ、実際に撮影した人、歳が近いんだよね。だから、ありのままの顔なんだ。あと、これ見てよ」と、渡されたクリアファイルに描かれているのは、秋葉原でよく見かける、ファンタジックで可愛らしいイラストだった。このイラストを描いているのも、ヨルダンの学生だという。日本の画風がここまで広がっているのかと驚かされた。それでも文化の壁は大きい。肌の露出が許されない中東の文化では、日本の「萌え」としてのイラストはかたく禁じられているのだという。
道のりは険しいが、文化交流という意味では、ささやかながら意義ある一歩を踏み出すことができたのではないだろうか。
(引地 優)